近年、「不動産仲介なしで物件を買いたい、もしくは借りたい」「仲介手数料を払いたくない」と考える人が増えています。
インターネット上での物件検索が容易になったことや不動産テック企業の台頭により、従来の不動産仲介業のあり方が問われています。
この記事では「不動産仲介はいらない」と考える消費者の声と、賃貸・売買市場における不動産仲介の役割について以下の内容を詳しく解説します。
また、仲介業者を通さない新しい賃貸契約の方法と、従来型の仲介サービスを利用するメリット・デメリットを比較検討します。
- 不動産仲介業が「いらない」と言われる理由と背景
- 不動産仲介業者の従来の役割
- 仲介業者を使わずに物件を探す方法
- 仲介業者を利用するメリット・デメリット
- 不動産仲介なしで取引する際のリスクと対策
- 不動産仲介業者の選び方
「不動産仲介業者はいらない」と断言するのではなく、一度立ち止まって、客観的にその役割やメリット・デメリットを把握しましょう。
そのうえで物件探しをすることで、より自分に適している不動産取引が実現できるはずです。
不動産仲介業が「いらない」と言われる理由と背景
昨今、「不動産仲介・いらない」と検索する人が増加しています。その背景には以下の要因が考えられます。
- インターネットによる情報格差の縮小
- 仲介手数料への不満
- DIY志向の高まり
- 不動産仲介業者への不信感
インターネットによる情報格差の縮小
SUUMOやHOME’S、at homeなどの不動産ポータルサイトが充実し、スマートフォン一つで物件情報を検索できる時代になりました。
物件の写真や間取り、設備情報、周辺環境など、以前なら不動産屋に足を運ばなければ得られなかった情報が、24時間いつでも閲覧可能です。
さらに、Googleマップやストリートビューを活用すれば、実際に足を運ばなくても周辺環境をある程度把握できます。
こうした情報へのアクセスのしやすさが、「仲介業者の情報提供機能」の価値を相対的に下げています。
また、SNSでの口コミ情報の拡散も情報格差が縮小する要因のひとつです。不動産仲介業者への口コミ、物件の口コミ、エリアの情報や治安情報まで、容易に得られるようになりました。
現在では地域に根ざした不動産仲介業者だからこそ知っている情報も減り、消費者も容易に情報収集できるようになったので、「不動産仲介・いらない」と検索されるようになりました。
仲介手数料への不満
不動産仲介業者を通して賃貸契約を結ぶ際、借主は仲介手数料を支払う必要があります。
法律上、この手数料は家賃の1か月分+消費税を上限としています。
たとえば月額8万円の物件であれば、8万8,000円(消費税10%込み)が上限となります。
新生活のスタート時に、敷金・礼金・前家賃などと合わせて支払うとなると、かなりの負担になるのは事実です。
また、法律で定められている不動産売買における仲介手数料の上限は、以下の速算式を用いて計算します。
4,000万円の不動産を購入したとすれば、(4,000万円×3%+ 6万円)×消費税10%=1,386,000円が上限となります。
「この手数料に見合うサービスを受けているのか?」と疑問を持つ人が増えているのも当然でしょう。
特に物件情報がインターネット上で簡単に検索できる現代では、「仲介業者の役割が薄れているのではないか」という声も聞かれます。
DIY志向の高まり
現代の消費者、特に若い世代を中心に「自分で調べて決める」というDIY志向が高まっています。
物件探しに限らず、さまざまなサービスや商品を自分で比較検討し、最適な選択をしたいと考える人が増えているのです。
そのため、「不動産のプロに任せる」というよりも、「自分で情報を集めて判断したい」という意識が強くなっています。
自分で調べる手間を惜しまない人にとっては、仲介業者のサービスが「余計なもの」に感じられることもあるでしょう。
不動産仲介業者への不信感
「営業マンが自分の都合の良い物件ばかり紹介する」「希望条件を伝えても聞いてもらえない」といった不満も少なくありません。
実際、不動産仲介業者は物件オーナーや管理会社との関係性や、手数料の高い物件を優先して紹介するケースもあります。
また、「囲い込み」と呼ばれる慣行も問題視されています。
これは特定の物件を一部の不動産会社だけが扱えるようにする商習慣で、消費者が物件選択の自由を制限されることになります。
不動産仲介の従来の役割
一般的に賃貸不動産における不動産仲介は以下の役割・業務を執り行います。
- 物件情報の収集と提供
- 物件内見のサポート
- 家主・管理会社との交渉
- 契約手続きのサポート
- アフターフォロー
基本的な業務内容は同じですが、売買物件の場合では「住宅ローンのあっせん」「引き渡し後の確定申告の案内」などが追加されます。
物件情報の収集と提供
不動産仲介業者の最も基本的な役割は借主の希望条件に合った物件情報を収集し、提供することです。
プロの目線で物件を選定し、内見のアポイントメントを取ってくれるため、借主は効率よく物件探しを進められるというメリットがあります。
特に地方や特定のエリアに強い地域密着型の不動産会社は、ポータルサイトには掲載されていない「未公開物件」の情報を持っていることもあります。
こうした情報へのアクセスは、仲介業者を通すことの大きなメリットの一つです。
物件内見サポート
内見時にはプロの視点にたった以下のアドバイスを受けられます。
●建物の状態
●設備の使い方
素人では見落としがちな建物の構造上の問題や、生活する上での注意点なども指摘してもらえるため、後悔のない物件選びができます。
また、複数物件を効率よく内見するためのルート設定や移動手段の提案なども、仲介業者のサポートがあると助かるポイントです。
家主・管理会社との交渉
賃料や契約条件の交渉は、個人で行うとハードルが高いと感じる人が多いでしょう。不動産仲介業者は借主の代理として、家主や管理会社と条件交渉を行います。
たとえば、敷金・礼金の減額交渉や、設備の修繕・交換の依頼など、借主にとって有利な条件を引き出してくれることもあります。
また、ペット飼育やリフォームなど、特別な条件について交渉する際も、プロの仲介があると話がスムーズに進むケースが多いです。
不動産売買の場合でも同様です。売主と買主の希望や条件を整理整頓し、お互いに納得できる契約内容を整えてくれるでしょう。
契約手続きのサポート
不動産賃貸借契約には多くの書類作成や手続きが必要です。
申込書の作成から、審査書類の提出、契約書の確認、重要事項説明など、煩雑な手続きを仲介業者がサポートしてくれます。
また、保証会社の手配や火災保険の加入、引っ越し業者の紹介など、入居に関連するさまざまな手配も仲介業者を通じて行えることが多く、ワンストップサービスとして便利です。
売買契約にはさらに多くの手続きが必要です。
住宅ローンを組んで不動産購入する場合には、金融機関の選定や事前審査、本申込、金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)、登記手続き、引渡し決済の段取りなどが挙げられます。
以上の不動産売買に伴う手続きには書類準備も必要で、適切なタイミングでの手続き案内も不動産仲介業者がサポートしてくれます。
アフターフォロー
入居後のトラブル対応も仲介業者の重要な役割です。
設備の不具合や、騒音トラブルなど、入居後に問題が発生した場合、仲介業者が間に入って家主や管理会社との調整してくれることがあります。
特に初めての一人暮らしや、引っ越し経験が少ない人にとっては、何かあったときに相談できる存在があるという安心感は大きいでしょう。
不動産売買においても、不動産購入後に必要な手続きがあります。
- 確定申告
- 住宅ローン控除
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 補助金、減税制度など
以上についても不動産仲介業者は相談に乗ってくれるでしょう。
不動産仲介なしで物件を探す方法
不動産仲介業者を介さずに物件を探したいと考える方は年々増加しています。
インターネットの普及や不動産テックの発展により、個人でも効率的に物件探しができる環境が整いつつあります。
ここでは、賃貸物件について仲介業者を使わずに探す方法を詳しく解説します。
賃貸物件を不動産仲介なしで探す方法
賃貸物件を探す際、不動産仲介業者を通すことが一般的ですが、仲介業者を利用せず、仲介手数料(家賃1か月分+消費税)を節約したいと考える方も少なくありません。
ここでは、仲介業者を介さずに賃貸物件を探す以下の4つの方法について詳しく解説します。
- 大手管理会社の直接契約
- UR賃貸住宅の活用
- スマート仲介の活用
- オーナー直接契約
そして、直接契約の注意点についても触れますので、しっかりと確認しましょう。
大手管理会社の直接契約
レオパレス21や大京穴吹不動産など大手管理会社の多くは、自社で運営するウェブサイトを通じて物件を直接契約できるサービスを提供しています。
このようなサービスを利用すれば、仲介手数料を支払うことなく物件を契約することが可能です。
これらの会社のウェブサイトでは、管理物件を検索・閲覧し、そのまま申し込みまで完結できるシステムを構築しています。
特に単身者向けや社宅需要のある物件を多く扱うレオパレス21などは、仲介業者を通さず直接契約するケースが少なく有りません。
また、管理会社と直接契約するメリットとして、物件に関する正確な情報を得やすいことや、入居後の設備トラブルなどにも素早く対応してもらいやすい点が挙げられます。
一方で、複数の管理会社の物件を比較検討したい場合は、それぞれのサイトを個別に確認する必要があるため、選択肢が限られる可能性があります。
UR賃貸住宅の活用
UR賃貸住宅(旧・都市再生機構、公団住宅)は、国が設立した独立行政法人が運営する賃貸住宅です。
URの最大の特徴は、仲介手数料が不要なだけでなく、敷金以外の礼金や更新料、保証人も原則不要という点です。
そして、URの物件探しは公式ウェブサイトから簡単に行えます。
主要な条件で検索でき、空室情報もリアルタイムで更新されているので検討しやすいでしょう。
申込みも直接URに対して行い、抽選や先着順など物件によって異なる方法で入居者が決定します。
URのメリットは以下のとおりです。
- 仲介手数料・礼金・更新料が不要
- 家賃が安定している(急な値上げがない)
- 長期入居が可能(正当な理由なく退去を求められない)
- 設備や共用部分の管理が行き届いている
- 保証人が不要(保証会社の利用も任意)
一方、デメリットとしては、物件数が限られていることや、人気エリアでは空室待ちになることが多い点、また収入基準などの入居条件があることが挙げられます。
特に都心部の物件は競争率が高いため、希望通りの物件に即入居できるとは限りません。
スマート仲介の活用
近年、ITを活用した「スマート仲介」と呼ばれる新しいタイプの賃貸サービスが登場しています。これらは従来の仲介業者よりも低コストで効率的なサービスを提供し、仲介手数料の削減や契約プロセスの簡素化を実現しています。
たとえば、「ietty」ではオンライン上で物件検索から内見予約、契約手続きまで多くのプロセスを完結でき、仲介手数料も50%オフになります。
また、従来の仲介業者よりも業務効率化された運営体制により、仲介手数料を従来の半額程度に抑えたり、特定の条件下では無料にするプランを提供しているスマート仲介の不動産会社もあります。
その他にも、内見時にはオンラインでの事前確認や、スマートロックを活用したセルフ内見システムの導入、自分の都合のいい時間に物件確認できるサービスなども出てきいます。
また、VR技術を用いた360度内見などの先進技術も導入している不動産会社もあるなど、技術の進歩により、賃貸物件探しもしやすくなるでしょう。
ただし、これらのサービスを利用する際には、サポート体制や契約条件を事前に確認することが重要です。
低コストである一方で、従来の対面サービスと比べてサポートの範囲や質が異なる場合があります。
トラブル発生時の対応体制や、契約後のフォロー体制についても確認しておくと安心ですね。
オーナー直接契約の探し方
物件オーナーと直接契約できれば仲介手数料を完全回避できる可能性があるでしょう。
この方法は特に個人オーナーが所有する小規模な物件で実現しやすい方法です。
SNSでの募集情報
最近では、X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアを通じて物件を募集するオーナーも増えています。
特定の地域名や「賃貸」「物件」などのキーワードで検索すると、個人オーナーからの直接募集が見つかることもあるでしょう。
たとえば「#東京直接賃貸」「#大阪オーナー直接」などのハッシュタグ検索をしてみてはいかがでしょうか。
また、地域の情報交換グループやコミュニティに参加することで、口コミ情報として物件情報が共有されることもあります。
地域情報誌やチラシ
地方都市を中心に、地域情報誌やフリーペーパーには個人オーナーによる直接募集の広告が掲載されていることがあります。
また、スーパーや駅の掲示板、コインランドリーなどに貼られているチラシにも要注目です。
特に大学周辺のエリアでは、学生向けの物件を直接募集するオーナーも多く、大学の掲示板や学生課などで情報が得られることもあります。
直接契約の注意点
オーナーとの直接契約には、仲介手数料が不要になるというメリットがある一方で、以下のようなリスクや注意点もあります。
契約書の不備 | 専門家のチェックがないため、契約書に不備がある可能性 |
トラブル対応 | 入居後のトラブル時に間に入る第三者がいないため、オーナーとの関係が悪化するリスクがある |
物件の安全性 | 物件の安全性:建物の耐震性や設備の安全性などを専門的に確認する機会が少ない |
個人情報の取り扱い | 個人情報の取り扱い:個人情報の管理が適切に行われるか不安がある |
法的知識の不足 | 賃貸借契約に関する法的知識が不足しているオーナーもいる |
直接契約を検討する際は、可能であれば契約書を司法書士や行政書士、弁護士などの専門家に確認してもらうことをおすすめします。
また、契約前に物件の状態や設備の不具合を詳細に確認し、写真などで記録しておくことも重要です。
オーナーとの直接交渉では、家賃や契約条件について柔軟に対応してもらえるケースもありますが、最低限の権利や義務についてはしっかりと理解し、口頭ではなく必ず書面で合意することが大切です。
以上のように、仲介業者を通さずに賃貸物件を探す方法はいくつかありますが、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
自分の状況や優先順位に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
特に初めての賃貸契約の場合は、専門家のサポートを受けられる選択肢も視野に入れながら判断すると良いでしょう。
不動産仲介を利用するメリットとデメリット
「不動産仲介がいらない」と判断する前に、不動産仲介を利用するメリットとデメリットについて改めて理解しておきましょう。
不動産仲介を利用するメリット
不動産仲介を利用するメリットは大きく分けて以下の5点で、いずれも賃貸・売買とともに共通しています。
- 専門知識とアドバイス
- 時間と労力の節約
- 未公開物件へのアクセス
- 交渉力と信頼関係
- 保証人が不要(保証会社の利用も任意)
専門知識とアドバイス
不動産仲介業者は、物件の構造や設備、周辺環境、法律や契約に関する専門知識を持っています。
素人では気づきにくいポイントをアドバイスしてもらえることは、大きなメリットです。
たとえば、「日当たりは良くても夏は西日が強く暑くなる」「この地域は数年後に再開発が予定されている」など、将来を見越したアドバイスを受けられることもあります。
保証会社による入居審査や住宅ローンの審査において不動産仲介業者の経験は大いに役に立ちます。
収入に対して高額すぎる賃料や、大きすぎる住宅ローンの借入額に対しても適切なアドバイスを受けられるでしょう。
時間と労力の節約
自分で物件を探し、内見のアポイントを取り、契約手続きをすべて行うのは、想像以上に時間と労力がかかります。
特に契約書の作成は物件ごとに記載する内容や詳細が異なるので容易ではありません。
仕事や学業で忙しい人にとっては、この手間を省けることは大きなメリットでしょう。
仲介業者に希望条件を伝えておけば、条件に合った物件をピックアップしてくれるため、効率よく物件探しを進められます。
未公開物件へのアクセス
不動産ポータルサイトに掲載されていない「未公開物件」は、仲介業者を通してのみ紹介を受けられます。
特に人気エリアや条件の良い物件は、公開前に成約してしまうこともあるため、良質な未公開物件の情報を持つ仲介業者を見つけることは重要です。
地域密着型の不動産会社は、地元のオーナーや売主との信頼関係から、独自の物件情報を持っていることが多いものです。
交渉力と信頼関係
不動産仲介業者は、オーナーや管理会社との間に信頼関係を築いていることが多いため、個人では難しい交渉も進めやすいというメリットがあります。
たとえば、敷金・礼金の減額交渉や、売買代金の値引き交渉、設備の修繕・交換の依頼などです。
また、入居審査や住宅ローンの審査に不安がある場合も、仲介業者が間に入ることで、スムーズに契約できることがあります。
安心感とトラブル対応
契約内容や重要事項の説明を専門家から受けられることで、安心して契約を進められます。
また、入居後、引渡し後にトラブルが発生した場合も、仲介業者が間に入って調整してくれることも少なくありません。
特に初めての一人暮らしや、引っ越し経験が少ない人、不動産売買が初めての人にとっては、この安心感は大きな価値があります。
不動産仲介を利用するデメリット
不動産仲介を利用することで以下のデメリットが発生します。
- 仲介手数料
- 営業の都合に左右される
- 選択肢が限定される
- 営業時間の制約
- 担当者との相性
仲介手数料のコスト
最大のデメリットは、やはり仲介手数料のコストです。
賃貸ならば家賃1か月分+消費税という金額は、引っ越し時の初期費用としては大きな負担になります。
特に敷金・礼金・前家賃などと合わせると、家賃の4〜6か月分もの費用が必要になることも少なくありません。
売買ならば物件価格の3%+ 6万円の金額ですが、物件価格が高額ならば100万円以上を支払うこともあるでしょう。
「この手数料に見合うサービスを受けているのか?」と疑問を持つ人が多いのも事実です。
営業の都合に左右される可能性
不動産仲介業者は、結局のところ「仲介手数料を得るためのビジネス」を行っています。
そのため、以下のようなケースが発生することもあります。
●成約しやすい物件に誘導される
●自社や関連会社の管理物件が優先される
●本当に条件に合った物件を見せてもらえない
こうした「営業の論理」に振り回される可能性は、賃貸でも売買でも仲介業者を利用する際の注意点と言えるでしょう。
選択肢が限定される
一つの不動産会社だけで物件を探すと、その会社が取り扱っている物件のみしか紹介されないため、選択肢が限られてしまいます。
特に大手不動産チェーンでは、自社グループの物件を優先的に紹介する傾向があります。
また、前述の「囲い込み」の慣行により、一部の不動産会社でしか取り扱っていない物件もあるため、複数の不動産会社を回る必要が出てくることもあるでしょう。
営業時間の制約
従来型の不動産仲介会社は、平日は夕方まで、土日も営業していることが多いですが、24時間対応というわけではありません。
仕事が忙しく、平日の日中や夜間しか時間が取れない人にとっては、この時間的制約がネックになることもあります。
内見の日程調整や契約手続きのために、休暇を取らなければならないケースもあるでしょう。
担当者との相性
不動産仲介は、結局のところ「人」が行うサービスです。
担当者との相性が良くないと、スムーズな物件探しができないこともあります。
たとえば、以下のようなケースです。
●過度な営業トークで押し切られる
●連絡がスムーズに取れない
●物件に関する質問に明確な回答がもらえない
●説明が分かりづらい、話しづらい
担当者を変更してもらえるケースもありますが、不満があれば別の不動産会社に切り替えることも検討すべきでしょう。
不動産仲介なしで取引する際のリスクと対策
不動産仲介業者を介さずに直接取引することで仲介手数料を節約できる一方、さまざまなリスクが伴います。
特に不動産取引に不慣れな方や高額な金額が動く不動産売買では、以下のリスクと対策をしっかりと理解しておく必要があります。
- 法的リスク
- 契約不備による損害
- 専門知識の不足によるトラブル
- 価格交渉の難しさ
そして、対策とリスクヘッジについても解説しますので、不動産仲介なしで契約を進める場合はしっかりと確認しておきましょう。
法的リスク
法的リスクとして、重要事項説明書と契約不備について解説します。
重要事項の見落とし
不動産取引では、物件に関する「重要事項」を確認することが法律で義務付けられています。
仲介業者が作成する「重要事項説明書」には、権利関係、法令上の制限、契約条件など多岐にわたる内容が含まれています。
仲介業者を介さない場合、これらの重要事項を自分で調査・確認する必要がありますが、素人では見落としが生じやすくなるでしょう。
たとえば、土地の場合、都市計画法による用途制限や建ぺい率・容積率の制限を見落とすと、想定していた建物が建てられないというトラブルに発展することも。
また、賃貸物件では、契約更新時の条件や原状回復義務の範囲などが曖昧になりがちです。
契約不備による損害
適切な契約書の作成も大きな課題です。
専門的な知識がなければ、条項の不備や解釈の相違により、後にトラブルが発生する可能性があります。
特に以下の項目については明確な取り決めがなければ紛争に発展しやすいと言えます。
●契約不履行時の対応
●契約不適合責任
また、登記手続きや住宅ローンの条件など、取引完了までの一連のプロセスにおいて、専門的なサポートがないことでミスが生じるリスクも高まります。
専門知識の不足によるトラブル
賃貸・売買いずれの取引にしても不動産取引では数多くの専門知識が求められます。
その一例として不動産売買時の建築知識と行政調査について解説します。
建物構造や設備の問題
不動産は高額な買い物であるにもかかわらず、素人目では判断できない建物の構造上の問題や設備の不具合が潜んでいることがあります。
仲介業者は物件調査のプロでありチェックすべきポイントを熟知していますが、個人では見落としやすい部分です。
特に中古物件では、雨漏りや白蟻被害、給排水管の劣化など、専門的な視点で確認しなければならない問題が数多く存在します。
築年数が経過した物件ほど、このようなリスクは高まるでしょう。
近隣環境や将来計画の把握
物件の価値を決める要素として周辺環境や地域の将来計画も重要です。
近隣に県の施設が建設される予定がないか、新たな道路計画はないかなど行政が持つ情報を収集し分析する必要があります。
仲介業者はこうした情報を日常的に収集していますが、個人では情報収集の方法がわからなかったり、情報があっても正確に解釈できなかったりするケースが多いでしょう。
価格交渉の難しさ
不動産仲介なしで不動産取引を進める場合、価格交渉はとても難しいものになります。
専門家かつ第三者である不動産仲介業者を介さない場合、どのようなポイントがあるのでしょうか。
売主・貸主との直接交渉のコツ
仲介業者を通さない直接交渉では感情的要素が入りやすく、冷静な交渉が難しくなる場合があります。
特に価格交渉は双方の利害が最も対立する部分であり、専門家を介さないことで交渉がスムーズに進まないリスクがあるでしょう。
直接交渉を成功させるコツは、まず相手の立場や状況を理解し、Win-Winの関係を構築することです。
ただし、ただ値下げを求めるのではなく物件の具体的な課題として修繕が必要な箇所などを指摘したうえで、根拠のある価格提示することが重要です。
適正価格の判断基準
物件の適正価格を判断するためには、類似物件の取引事例を収集し比較分析する必要があります。
国土交通省の「不動産取引価格情報」や民間の不動産ポータルサイトで相場を調査できますが、個別物件の特性として日当たり、間取り、設備の状態などを考慮した適正価格の判断は容易ではありません。
仲介業者は日々の業務の中で多くの物件を扱い、価格感覚が養われています。
しかしながら、個人では取引頻度が限られるため、この感覚を持つことが難しいのが現実です。
対策とリスクヘッジ
最後に不動産仲介なしで契約する場合の対策とリスクヘッジについて解説します。
不動産取引の基礎知識を学ぶ
仲介業者を介さずに取引する場合、最低限の不動産知識を身につける必要があります。
書籍やウェブサイトで基礎知識を学ぶことはもちろん、国土交通省や法務省のウェブサイトで公開されている資料も参考になるでしょう。
また、地方自治体が開催する不動産セミナーに参加するのも効果的です。
特に重要な法律知識としては、宅地建物取引業法、民法、区分所有法などが挙げられます。
司法書士や弁護士など他の専門家の活用
仲介業者を通さなくても、取引の一部において専門家のサポートを受けることは可能です。
特に契約書の作成や確認には、弁護士や司法書士のサービスを利用することを強くおすすめします。
登記手続きには司法書士、税金対策には税理士など、各分野の専門家をピンポイントで活用することで、全体のコストを抑えつつリスクを軽減できるでしょう。
特に近年は、オンラインで気軽に専門家に相談できるサービスも増えており、比較的リーズナブルな料金で専門的なアドバイスを受けられるようになっています。
契約前の第三者チェック
契約前には、建物の状態を第三者の専門家にチェックしてもらうことも重要です。
ホームインスペクション(住宅診断)のサービスを利用すれば、建物の構造や設備の状態を専門家が調査し、潜在的な問題点を指摘してくれます。
費用は数万円程度かかりますが、将来的な修繕費用を考えれば十分に元が取れる投資と言えるでしょう。
特に中古住宅の購入では、このようなサービスの活用が強く推奨されます。
不動産仲介業者はいらないのか?まとめ
近年、インターネットの普及や不動産テック企業の台頭により「不動産仲介はいらない」と考える人が増えています。
「不動産仲介がいらない」と言われる主な理由としては以下の理由が挙げられます。
- インターネットによる情報格差の縮小
- 仲介手数料への不満
- DIY志向の高まり
- 不動産仲介業者への不信感
一方で不動産仲介業者は以下の重要な役割を担っているのです。
- 専門知識とアドバイスの提供
- 物件情報の収集と未公開物件の紹介
- 内見サポートと物件評価
- 家主・管理会社との条件交渉
- 契約手続きの代行とサポート
- 入居後・購入後のアフターフォロー
仲介業者を使わずに物件を探す主な方法として、賃貸物件では、大手管理会社との直接契約、UR賃貸住宅の活用、スマート仲介サービスの利用、オーナーとの直接契約などがあります。
特にURは仲介手数料・礼金・更新料が不要であり長期居住に適しているでしょう。
そして、仲介業者利用のメリットは専門知識の活用、時間と労力の節約、未公開物件へのアクセス、交渉力の活用、トラブル時の安心感などがあります。
一方デメリットとしては仲介手数料のコスト負担、営業の都合に左右される可能性、物件選択肢の限定、営業時間の制約、担当者との相性などが挙げられます。
仲介なしで取引する際のリスクとしては以下が挙げられるでしょう。
法的リスク | 重要事項の見落としや契約不備による損害 |
専門知識不足によるトラブル | 建物構造や設備の問題、近隣エリアの将来計画の把握不足 |
価格交渉の難しさ | 直接交渉のスキル不足、適正価格の判断困難 |
これらのリスクを軽減するためには、不動産取引の基礎知識習得、弁護士や司法書士などの専門家の活用、契約前の第三者チェックが効果的です。
結論として「不動産仲介がいらない」と断言するのではなく、取引の重要性や自身の経験に応じて仲介業者の活用を検討することが賢明です。
特に初めての不動産取引や高額物件の場合は、専門家のサポートにより将来的なトラブルを防ぎ安全な取引が可能になります。