マンション売却ならどこがいい?不動産会社の選び方から流れ・手数料についても解説

マンション売却ならどこがいい

株式会社東京カンテイの「中古マンション70㎡価格推移2024年(年間版)」では、東京都のみ価格上昇し、それ以外の首都圏では下落と報じられ大きな話題となりました。

いつかは中古マンション相場が下落に転じると言われていたものの、株式会社東京カンテイが発表した記事により、すでにピークアウトしたと考える人も少なくないでしょう。

そして、マンションを保有している人のなかには、今こそマンション売却のタイミングと考え、実際に売却を検討している人もいるのではないでしょうか。

しかしながらマンション売却も単純ではないもので、売却するならどこがいいのかなど不動産会社の選び方や、マンション売却の流れや手数料について把握しなければなりません。

本記事ではマンション売却について以下の内容を解説しています。

この記事でわかること
  • マンション売却の不動産会社はどこがいい?不動産会社の選び方
  • マンション売却の流れとは?
  • マンション売却の手数料

これからマンション売却をしようと検討している人は、記事を確認して、マンション売却の成功を目指しましょう。

マンション売却の不動産会社はどこがいい?不動産会社の選び方

マンション売却するならどこがいいのか
マンション売却を進めるにあたって不動産会社との取引は必要不可欠です。なぜなら不動産取引は専門的な知識が要求され、そのひとつひとつに間違いが許されないからです。

もちろん個人でマンションの買い手を探し、売買契約を締結、引渡しはできますが、手続きが煩雑で多大な労力が要求されるため現実的とは言えないでしょう。

不動産取引の専門家である不動産会社ですが、マンション売却のためにはどこがいいのか、不動産会社の選び方はどうしたらいいのでしょうか。ここでは不動産会社について以下の内容を解説しています。

不動産会社の解説内容
  • 不動産会社はどこがいい?不動産会社の種類とは
  • 仲介と買取
  • 不動産会社の選び方

まずは不動産会社について理解し、自分に適した不動産会社の選び方を確認しましょう。

不動産会社はどこがいい?不動産会社の種類とは

マンション売却の不動産会社の種類
ひとことで不動産会社と言ってもその業務は多岐に渡ります。

大きく分けると賃貸と売買と管理ですが、売買だけでも仲介、販売代理、デベロッパーといくつかに分けられ、取り扱う物件も土地から戸建、マンション、店舗と不動産会社によって異なります。

もちろん、それらの不動産を総合的に扱っている会社もあれば、特化している会社もあるでしょう。また、全国的知名度がある大手不動産会社から、そのエリアに複数店舗ある不動産会社、地域密着の中小不動産会社など、細かく分類したらきりがありません。

そのなかで、マンション売却のための不動産会社はどこがいいかというと「売買仲介」と「買取再販」の業態を営んでいる不動産会社だと言えます。それぞれの特徴は以下のとおりです。

売買仲介 不動産の売主と買主の間に入り不動産取引を円滑に進めることが業務の不動産会社。不動産取引が成立した際に売主・買主から支払われる仲介手数料が会社の利益になる。
買取再販 所有者から不動産を買取り不動産に対し手を加えて再販することが業務の不動産会社。再販時の売却益が会社の利益になる。

これらの会社はマンションに限らず、戸建てや収益物件などを取り扱う会社もあります。販売実績を確認し、マンションの取り扱いが多い不動産会社を選ぶと良いでしょう。

売買仲介と買取再販、マンションを売却する場合にはそれぞれどのような立場になるのでしょうか。売買仲介に取り組んでいる不動産会社に対しては、マンションの売主の立場になります。

不動産会社に対して販売業務を委託し、買い手を探してもらいます。買い手が見つかり不動産売買契約を経て、マンションを引き渡すところまでが不動産会社の業務です。

無事に引渡しが完了したら、売却金額に応じた仲介手数料を支払います。

一方で、買取再販に取り組んでいる不動産会社に対しては、売買仲介と同様にマンションの売主になりますが、異なる点としてはマンションの買主は不動産会社そのものになります。

不動産会社に買取査定してもらい、売買契約を経て引渡しになります。直接の不動産取引になるため仲介手数料は発生せず、販売活動をしないことが特徴です。

仲介と買取のメリット・デメリットについて解説

不動産会社種類メリットデメリット

メリット デメリット
売買仲介 ・マンション売却相場程度で売却でき、買取と比べて高く売れる可能性がある
・不動産会社のサポートを受けながら売却できる
・販売活動をするため買取と比べて時間がかかる
・仲介手数料が必要
・売却できないこともある
買取再販 ・販売活動をせず売買契約から決済までの期間も短いので期間がかからずマンション売却できる
・直接契約のため仲介手数料がかからない
・確実に売却できる
・仲介と比べて売却価格が安い

まとめると、時間がかかるけれどより高額で売却できるのが「仲介」、手早く売却できるけれども金額が安くなるのが「買取」ということです。

それぞれどのような状況の人に向いているのでしょうか。

仲介に向いている人

仲介に向いている人は、マンション売却に時間をかけられる人です。一般的な売却期間は早ければ3か月程度とは言われていますが、必ずしもその期間で売却できるとは限りません。

長ければ9か月から1年以上とも言われています。マンション売却に時間をかけられるならば、売買仲介でじっくりと売却すると良いでしょう。

マンションに住みながら売却、売却のめどがついてから新しい物件を探したいと考える「売り先行」の人にも向いている方法です。

また、金額的にも売却相場に近い価格で売却可能なので、より高額で売却したいと考える人には向いています。

もし、住宅ローンの残債額の関係で最低限の売却額が決まっている人や、手元に残したい金額が決まっているならば、仲介から検討することがオススメです。万が一、買い手が見つからなくても仲介ならば時期を改めることもできますよ。

買取に向いている人

買取に向いている人は、現金や相続でマンションを取得した人や住宅ローンの残債が少なく、手間をかけずに確実に、かつ迅速に売却したい人です。

買取は仲介と比べると金額が低くなりがちです。その代わり、販売活動をしないので売却期間は短く、不動産会社が買い取るので確実に売却できます。

たとえば、急な転勤などが理由で迅速かつ確実に売却したい人にとっては買取が向いていると言えるでしょう。

また、販売活動をしないメリットとして、同じマンションの住人や周囲にマンション売却を悟られづらいことも挙げられます。秘密裏にことを進めたい人は買取から検討すると良いでしょう。

不動産会社の選び方を解説

不動産会社選び方
公益財団法人不動産流通推進センターの「2024不動産業統計集」によると、2023年の時点で全国ある不動産会社の法人数は378,460社です。

これは、コンビニエンスストアの57,594店舗(2023年時点、日本経済新聞社調べ)や歯科医院数の66,843件(2024年2月時点、厚生労働省調べ)をはるかに上回る数です。

どこにでもあると言っても過言ではない不動産会社ですが、具体的にはどこがいいのでしょうか。

不動産会社はどこがいい?最初に確認するべき3つのポイント

不動産会社を選ぶ際には、まず、以下の3つのポイントを確認しましょう。

不動産会社選びのポイント
  • 売買物件を取り扱いしているか
  • 不動産売買を得意としているか
  • 売却エリアでの実績があるか

1.売買物件を取り扱いしているか

不動産会社の中には、賃貸専業、賃貸物件の管理専業、売買物件を扱っているけれども不動産開発に取り組んでいるなど、専業で不動産事業に取り組んでいる会社もあります。

ひとことで不動産会社と言ってもさまざまなジャンルの会社があるので「売買物件を取り扱っているのかどうか」は重要なポイントです。

2.不動産売買を得意としているか

売買物件を取り扱っている会社でも、主な収入源は賃貸物件の仲介で、売買物件の取り扱いに慣れていない会社もあります。

また、賃貸仲介に専業で取り組んでいる会社でも不動産売買を引き受けることは可能です。

賃貸専業の会社に依頼して「賃貸専門なので」と断られればいいですが「お任せください!」となってしまうことも少なくありません。

そうなると、売買に不慣れな会社がマンション売却をすることになり、望まない結果になる可能性も出てきます。

3.売却エリアでの実績があるか

売買物件に慣れている不動産会社でも、物件のあるエリアで取引実績があるかどうかを確認しなければなりません。

同エリアでの取引実績が多いほど、実際に多くの売主や買主に会っていて、エリアの特性、市場性、相場の推移などを具体的に把握しています。

そして、同エリアで物件を探している顧客を抱えている可能性も高いため、早期売却も期待できます。査定金額に対する信頼性も高いので、売却エリアでの取引実績の多い少ないは非常に重要です。

実績の有無を確認する方法のひとつに不動産会社の免許番号の確認があります。免許番号とは不動産会社が「宅建業」を営むために国土交通省や都道府県から割り振られた番号です。

「国土交通大臣免許(◯)第◯◯◯◯号」や「東京都知事免許(◯)第◯◯◯◯号」と表記されています。ここで着目してほしいのがカッコ内の番号で、この番号は免許を何回更新したかを示しています。

宅建業の免許は5年に1回更新され、そのたびにカッコ内の番号が増えていきます。たとえばカッコ内の番号が(4)だったのならば、その会社は少なくとも15年以上宅建業を営んでいることになります。

更新回数が多い会社ほど、それだけの期間、不動産会社を地域で経営してきた証明なので実績を判断する材料のひとつとして考えられるでしょう。

不動産会社の見極め方を解説

マンションを売る不動産会社の見極め方
不動産会社の選び方で確認するべきポイントは理解できても、具体的にどうしたら良いのか分からない人もいることでしょう。

もちろん、直接、不動産会社に連絡して、聞き取りすることも方法のひとつです。しかしながら、必ずしも真実を話してもらえるかどうかは分かりません。

ここでは、不動産会社に直接連絡を取らずに見極める方法を解説します。

不動産ポータルサイトをチェックする

スーモのサイト
不動産ポータルサイトとは複数の不動産会社が物件情報を掲載しているサイトのことです。

ひとつのサイトでまとめて物件情報を確認できるので物件情報を探している買い手側の利用者にとって便利なサイトですが、売主側にとっても活用できます。

たとえば「SUUMO」「アットホーム」「ホームズ」などはテレビコマーシャルなどでも目にする有名な不動産ポータルサイトです。

これらのポータルサイトにて、物件があるエリアのマンション情報を確認しましょう。そうすると、多くの物件情報が出てきますが、着目してほしいのは物件を取り扱っている不動産会社です。

ここで扱っている物件数が多い不動産会社ほど、マンション売却に力を入れていると言えます。

不動産会社のホームぺージをチェックする

不動産ポータルサイトにて見つけた不動産会社のホームページを確認することも、見極めに必要です。不動産会社のホームページでは販売実績や現在販売中の物件を確認しましょう。

エリアや物件種類に偏りがないか、小まめに情報が更新されているかがポイントです。昨今では不動産購入にあたってインターネットを活用する人がほとんどです。

ホームページがあっても更新されていなかったり、ホームページ自体がない不動産会社はインターネットを上手に活用できていません。そのため、集客能力に疑問符がついてしまいます。

実際に店舗に見に行く

不動産会社を見極める際に店舗から得られる情報もたくさんあります。店舗の立地も重要ですし、店舗内外がきれいで整っていればお客さんも入りやすいでしょう。

店舗前に物件情報が展示されていれば、取り扱っている物件の傾向も見ることができます。実際に店舗を見に行くならば、土日や祝日の日中に行ってみることをおすすめします。

もし、外から中の様子がうかがえるのならば、接客ブースにお客さんがいるかどうかも確認してみると良いでしょう。

マンション売る不動産会社は大手と地域密着の中小どっちがいいのか?

不動産会社は大手と中小どっちがいいのか
不動産会社にはテレビのコマーシャルでも目にするような大手不動産会社から、地域密着型の中小不動産会社まであります。

先述した「不動産会社の見極め方」に当てはめると、大手不動産会社ならば間違いないように感じてしまいますが、地域密着型の中小不動産会社にも多くの魅力があります。

それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

大手不動産会社のメリット・デメリットについて解説

大手不動産会社のメリットは以下の3点です。

大手不動産会社のメリット
  • 豊富な資金力による充実した広告活動
  • 顧客情報量が豊富
  • 従業員の能力が安定している

大手の不動産会社はスケールメリットを生かし、テレビや新聞広告、インターネット広告とさまざまな媒体で広告を出せます。それにより、多くの顧客に目に留まることになるのです。

買い手からすると情報量が多く集まって、より良い物件を探してもらえて、一方で売り手は、顧客が集まることでスムーズに売却できるようになります。

そして、顧客情報が豊富なので、場合によっては不動産会社が抱えている既存顧客内で買い手が決まることもあるでしょう。また、大手の不動産会社は社員研修が充実していて、業務マニュアルが徹底されています。

社員による知識の差や能力差が少なく、どの担当者に相談しても安定した対応を得られることがメリットです。

一方で大手不動産会社のデメリットは、エリアに精通しきれていない担当者がいることです。大手不動産会社は転勤や退職で人の入れ替わりも多く、店長クラスでも異動が少なくありません。

どうしても人が長く営業所に根づきづらい環境があるために、エリアの情報に疎いケースもあります。また、大手不動産会社は仲介手数料の交渉もしづらいものです。

中小の不動産会社ならその場で値引きを即決してくれるケースがありますが、大手不動産会社の場合では即決してくれるとは限りません。そして、仲介手数料の値引きをしてもらえない可能性も高いでしょう。

地域密着の中小不動産会社のメリット・デメリットについて解説

地域密着の中小不動産会社のメリットは以下の2点です。

大手不動産会社のメリット
  • 地域の特性や環境を熟知している
  • 柔軟な対応が期待できる

マンション売却において、不動産会社がマンションがあるエリアの特性や環境を熟知しているならば、信頼のおける査定や、地域に併せた販売戦略の提案を受けられるでしょう。

また、中小の不動産会社では個人の裁量に任せられることも多く、顧客に対する柔軟な対応も期待できます。

たとえば、連絡方法を取ってみても電話やメールはもちろん、スマートフォンのメッセンジャーアプリなど、顧客が望む方法で対応してくれるでしょう。

大手の不動産会社と比べると中小の不動産会社が扱う顧客の数は多くありません。そのため、顧客ひとりひとりを大切に扱い、しっかりと向き合ってくれる傾向にあります。

一方で、中小の不動産会社のデメリットは、担当者の能力差がはっきりとしていて、得意・不得意な分野があることです。

大手の不動産会社では従業員も多いのであらゆる分野に対応することが可能ですが、中小の不動産会社では社員数が限られたなかで担当者がさまざまな案件に対応します。

なかには戸建や土地の取り扱いは得意でも、マンションの取り扱いには慣れていない担当者がいることも考えられます。

マンション売却の流れについて解説

マンション売却の流れ
不動産会社はどこがいいのか?不動産会社の選び方を確認したのならば、次はマンション売却の流れを把握しましょう。

基本的な流れは以下のとおりです。

マンション売却の流れ
  1. マンションの売却準備をする
  2. 不動産会社に査定依頼する
  3. 不動産会社と媒介契約を締結する
  4. 販売活動
  5. 買い手が見つかれば売買契約を締結する
  6. 引渡しする
  7. マンションを売却した翌年に確定申告する

簡単に言うと、不動産会社を選び、売却依頼した不動産会社の指示に従って行動すれば売却できます。

買取の場合では3と4の流れが省略されるのみで、基本的には同じです。

しかしながら、マンション売却の流れにおける重要なポイントは、自分で行動する・判断する以下の部分です。

1.マンションの売却準備
2.不動産会社とのやりとり
3.販売活動から契約・引渡し

ここでは、マンション売却の流れのなかで「自分が売主として何をするべき」かにフォーカスして解説します。

マンション売却で必要になる事前準備とは

マンション売却において重要なポイントに「準備」があります。しっかりと準備することが後の流れや、売却金額まで決定してしまうからです。

そんなマンション売却でポイントになる準備は以下の3点です。

必要な事前準備
  • マンションの売却相場を確認する
  • マンションの売却期限を検討する
  • マンションの売却可能価格を確認する

それぞれの準備について、なぜ必要なのか、そして具体的に何をするべきか解説しましょう。

マンションの売却相場を確認する

「相場を確認するために不動産会社に査定依頼するのでは?」という意見もありますが、自分の目で確認することが重要です。

もし、事前に売却相場を調べない状態で不動産会社の査定書を見た場合、その査定結果が正しいかどうか判断できるでしょうか。不動産会社も会社の都合により、査定結果を調整することがあります。

たとえば、自社で買取したいから査定結果を安く提出したり、売却依頼を受けたいので高く査定することもあるのです。そのため、査定結果が正しいのかどうかを判断するためにも、マンションの売却相場を把握しておく必要があります。

マンションの売却相場を確認する方法は、現在、販売されている物件情報を集めることです。たとえば不動産ポータルサイトでの情報収集や、折込チラシ・ポスティングチラシの確認などが良い方法です。

もし、売却するマンションと同一の物件で販売中の住戸があるならば、非常に参考になる情報だと言えるでしょう。

それらの物件情報から築年数や立地、販売価格を確認したうえで、可能ならばいつ頃から売りに出されて、いつ頃物件情報を目にしなくなったのかを確認します。

そうすることでおおよその成約価格を推測でき、マンションの売却相場を養うことにつながります。

なお、販売中の物件情報を収集する方法は売却前に一度だけ情報を集めるだけでも効果がありますが、時間をかければかけるほど効果が大きくなります。

マンションの売却期限を検討する

マンションの売却にはある程度の期間がかかるもので、マンション売却の流れと照らし合わせて考えると最短で3か月程度、長ければ1年以上かかります。

仲介でマンション売却する場合の期間の目安として以下の表をご参照ください。

不動産会社への査定依頼~媒介契約まで 2週間~1か月程度
販売活動から売買契約 2週間~買い手が見つかるまで
売買契約から引渡し 1か月~2か月程度

さらに、媒介契約から販売活動開始までの期間や売買契約の準備期間などを含めて考えると最短でも3か月程度かかります。

もちろん、複数社に査定依頼すればそれだけ時間がかかりますし、販売活動や売買契約、引渡しも相手がいることなので、スムーズに予定を建てられるとは限りません。

マンション売却のためにはある程度の期間が必要であることを認識したうえで、いつまでに売却したいのかを検討しましょう。

もし、少しでも早く売却したいのであれば、買取や相場より低い価格設定で販売開始することも検討しなければなりません。

半年後にはマンションを手放したいということであっても、マンション売却ではタイトなスケジュールなので、相場価格で売却できない可能性もあります。

一方で、時間にゆとりを持たせた売却スケジュールならば、より高額でマンション売却できるかもしれません。マンションの売却期限を検討することは売却価格にも関わってくるので、いつまでに売却したいかをしっかりと検討しましょう。

マンションの売却可能価格を検討する

マンション売却における前提事項は売却可能価格や売却希望価格を決めておくことです。

たとえば、住宅ローンの残債があり売却によって完済する、売却後の新居購入の資金計画にはいくら必要、老後資金としていくら手元に置いておきたいなどで、おおよその価格を決められるでしょう。

まず、「いくらで売却したいのか」を明確にしたうえで、相場の確認や査定依頼、本記事で後述する手数料・諸費用の計算などを進めましょう。

特に住宅ローンの残債がある状態で売却する場合には注意が必要です。なぜなら、マンションを売却するためには住宅ローンを完済する必要があるからです。

残債と売却価格の関係を以下の用語で示します。

売却価格>住宅ローンの残債・・・アンダーローン
住宅ローンの残債>売却価格・・・オーバーローン

アンダーローンでは売却によって残債を完済し、手元に資金が残るので問題なく売却できます。一方で、オーバーローンの場合は売却金額で住宅ローンの残債を返済しても完済できません。

売却するためには自己資金を用いて住宅ローンを完済しなければならないのです。

そのため、住宅ローンの残債がある状態でマンション売却を検討する際は、必ず住宅ローンの残債額を確認しましょう。

不動産会社とのやりとりにおける注意点について

マンション売却の注意点
「不動産会社の選び方」にて不動産会社はどこがいいのかを解説しましたが、査定依頼から始まる不動産会社とのやり取りのなかで注意したい点は以下の3点です。

やりとりの注意点
  • 査定は複数社に依頼して査定根拠と販売戦略の説明を受けよう
  • 媒介契約の種類を理解する
  • 担当者が信頼できるかどうかが最重要

査定は複数社に依頼して査定根拠と販売戦略の説明を受けよう

査定依頼は査定書・査定金額を提示してもらうだけではなく「査定額の根拠」と、どうやってマンションの販売活動をするのか「販売戦略」の説明を受けることが重要です。

単純に複数社からでた査定額を比較するだけでは不十分で、査定根拠を明確に説明できなければ、査定額は絵に描いた餅でしかありません。

また、説明が分かりやすいかどうかは担当者の対応を比較する材料でもあります。

販売戦略の説明では具体的な販売プランを示してくれるかどうかで不動産会社を判断しましょう。

媒介契約の種類を理解する

媒介契約とは不動産会社に販売活動を委託する際に締結する契約のことで、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約と3種類の契約があります。

契約の種類によって手数料に差は出ませんし、特別な依頼をしない限りこの段階で費用がかかることはありませんが、その特徴をしっかりと理解しておきましょう。

一般媒介契約

一般媒介契約とは、複数の不動産会社に対して販売活動を委託できる唯一の契約です。契約期間にも定めはありませんが、行政指導で3か月以内とされているので、一般的に3か月が期限とされています。

販売活動を委託したとしても売主自身で買い手を探して売買契約することも可能です。

契約を解除する場合は、不動産会社に対して解除の意向を示せば良く、契約期間中いつでも契約解除できます。

一般媒介契約を締結した不動産会社は、必ずしもレインズに登録する必要はなく、販売活動業務の報告義務もありません。レインズとは、全国の不動産会社が利用できる不動産取引のネットワークのことです。

レインズに物件情報が登録されると、全国の不動産会社に物件情報を周知されるので、売主にとってはメリットになります。一般媒介契約ではレインズに登録するかどうかは不動産会社の判断になります。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は専任媒介契約と同様に1社の不動産会社にしか販売活動を委託できない契約で、契約期間、解約についても同様です。

異なる点として、専属専任媒介契約は売主自身で買い手を探し、売買契約できない点です。

専属専任媒介契約を締結した不動産会社は、媒介契約締結後5日以内にレインズに物件情報を掲載し、1週間に1度以上の頻度で販売活動業務報告をしなければなりません。

専属専任媒介契約は媒介契約のなかでもっとも、売主・不動産会社双方の縛りが強い媒介契約だと言えます。

媒介契約の選び方

媒介契約には一長一短があり、どの契約が良いか一概には言えません。しかしながら、物件の立地や状況に応じて選ぶこともひとつの考え方です。

たとえば、立地が良い都市部にある物件、人気のある物件ならば複数の不動産会社と契約する一般媒介契約が適しているでしょう。

なぜなら、立地が良い物件や都市部の物件は購入希望者が多く、不動産会社同士を競わせることで、より良い条件で売却できる可能性があるからです。

一方で、人気エリアから外れている、相場価格より高額で売却したいなどの場合は購入希望者が見つかりづらいので、手厚く販売活動してもらえる専任媒介契約や専属専任媒介契約が適しています。

しかしながら、以上は一例でしかありません。信頼できる不動産会社が見つかったので専任媒介契約にする、不動産会社が絞りきれなかったのでひとまず一般媒介契約で複数の不動産会社と契約するなどもひとつの方法です。

担当者が信頼できるかどうかが最重要

マンション売却は短くても3か月程度、長ければ1年以上の時間がかかる長期間の取り組みで、売却期間中は不動産会社とコミュニケーションをとらなければなりません。

もし、説明が分かりづらい、レスポンスが悪い、会話が噛み合わないなど、担当者が信頼できないのならば、大きなストレスとなってしまうでしょう。

それは大手不動産会社、中小不動産会社に関係なく起こりえることです。「担当者が信頼できるかどうか」はマンション売却の不動産会社選びにおいて最重要だと言えます。

マンションの販売活動から売買契約・引渡しまでに取り組むこと

マンション引き渡しまでにすること
販売活動が始まると基本的に不動産会社任せになり、自分でできることと言えばスケジュールの調整くらいだと考えがちです。

しかしながら、販売活動でプラスになることや、スムーズな売却・引渡しのために以下のことに取り組むと良いでしょう。

取り組むべき事項
  • マンションの情報を整理する
  • 人を迎え入れる準備をする
  • 片付け・掃除・断捨離する

マンションの情報を整理し内覧者に伝えよう

マンション住人による周辺地域の情報は内覧者にとってはありがたい検討材料だと言えます。

たとえば、近くのスーパーや通学路の交通状況、医療機関の混み具合など不動産会社の人間では分からないことも住人ならば知っているものです。

同じマンションの住人についてや管理組合の状況についても同様です。これらの情報を整理して内覧時に買い手に伝えることで、買い手の検討に役立つでしょう。

もちろん、良い情報が多いに越したことはありませんが、悪い情報もあるならば伝えることも必要です。

マンションの室内についても情報を整理しておくことをおすすめします。具体的にはリフォームしていればその時期や内容についてです。

契約時には物件状況報告書を作成して買主に伝えますが、内覧者にとっても重要な情報なので、伝えておきましょう。

人を迎え入れる準備をする

住みながらのマンション売却では生活空間に内覧者が来ることになるので、人を迎え入れる準備をしておくことが重要です。

たとえ良い物件だとしても、室内が雑然としていれば印象は悪くなってしまいます。

生活感が出てしまうことは仕方ありませんが、以下の内容を少し心がけるだけでも印象は変わるでしょう、

・洗濯物を干したまま、取り込んだままにしない
・できる範囲で掃除をして、玄関・リビングには芳香剤・消臭剤を設置する
・来客用のスリッパを用意する
・水回りをきれいにすることで印象が良くなる
・ペットを飼育している場合、内覧時には散歩に出かけたり人に預けておく

特にペットについて、内覧者がアレルギーを持っている場合もあり、ペットがいることで十分に内覧できないことも考えられます。

事前に不動産会社に対してペットを飼育していることを伝え、内覧者に伝えるようにしてください。

片付け・掃除・断捨離を行う

マンション売却では、内覧のための片付け・掃除も重要ですが、売却後の引越しに備えた断捨離をおすすめします。使っていないもの、収納に入れたままで使っていないものは処分・売却してしまいましょう。

引越し時に不用品の処分を一気に行うことは大きな労力が必要になるため、販売活動中に少しずつ進めてると良いですよ。

そして、収納内を空けると、収納の奥行きを含めた寸法を確認できるようになるので、内覧者の参考にもなります。

ちなみに、マンション売却時にリフォームや修繕を検討する人もいますが、必ずしも必要ではありません。なぜなら、自分の好きなようにリフォームしたいと考える買い手が少なくないからです。

壁紙の張り替えや水回りのリフォームなど好みが出る部分については取り組まず、故障しているものの修繕や給湯器の交換などは必要に応じて取り組みましょう。

マンション売却の手数料について解説

マンション売却でかかる手数料の大きなものは仲介手数料ですが、それ以外にはどのような諸費用がかかるのでしょうか。

ここではマンション売却における手数料の計算や、諸費用一覧、売却後の確定申告について解説します。

マンション売却でかかる仲介手数料の計算方法

マンションに限らず、不動産売却を不動産会社に依頼した場合、契約の成功報酬として仲介手数料を支払います。

仲介手数料の計算方法は以下のとおり、売買価格が400万円以上の物件で用いられる速算式です。

仲介手数料=(売却価格×3%+6万円)×消費税

たとえば、3,000万円でマンションを売却した場合、以下の金額を不動産会社に仲介手数料として支払います。

(3,000万円×3%+6万円)×消費税10%=1,056,000円

この金額は上限なので、これ以上支払うことはありません。

不動産会社が仲介に入った場合、特別なことを依頼しない限りは仲介手数料以外に支払う費用がないことも覚えておきましょう。

特別なこととは普段は行わない媒体での広告活動や、特殊な物件調査、遠方にある物件の調査で必要な交通費、不動産コンサルティング業務などです。

仲介手数料を支払うタイミングは不動産会社と締結した媒介契約書に記載されていて、売買契約時に50%、引渡し時に50%や引渡し時に手数料の全額を支払うなど不動産会社が定めたパターンがあります。

なお、売買金額が400万円未満の場合は以下の計算方法で仲介手数料を算出します。

200万円以下 売買価格×5%×消費税
200万円~400万円以下 売買価格×4%×消費税

売買価格が380万円の場合は以下の計算方法で仲介手数料を求めます。

(200万円×5%+180万円×4%)×消費税10%=189,200円

しかしながら、仲介手数料には1点、注意点があります。

2024年7月1から法改正により、空家になっている800万円以下のマンションは仲介手数料が最大30万円(税別)と定められました。

詳しくは国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」をご確認ください。

マンション売却にかかる諸経費一覧

マンション売却では以下の諸経費が必要です。

マンション売却の諸経費
  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 抵当権抹消費用
  • 住宅ローン一括返済費用
  • 譲渡所得税
  • 住民票、印鑑証明書など書類取得費用
  • 引越し費用など

仲介手数料については前項で解説し、譲渡所得税については後述、書類取得費用や引越し費用などは省略します。

それ以外の諸経費について解説します。

印紙税

印紙税とは売買契約書を作成した際に納税する税金で、売買契約書の売買金額によって納税する金額が異なります。

10万円を超え50万円以下のもの 200円
50万円を超え100万円以下のもの 500円
100万円を超え500万円以下のもの 1,000円
500万円を超え1000万円以下のもの 5,000円
1000万円を超え5000万円以下のもの 10,000円
5000万円を超え1億円以下のもの 30,000円
1億円を超え5億円以下のもの 60,000円

(引用元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

この印紙税の税額は令和9年3月31日まで適用される軽減措置を受けたもので、令和9年3月31日以降はこの限りではありません。

印紙税の納税方法は法務局や郵便局で収入印紙を購入し、売買契約書に貼り付けた後に消印することで納税したとみなされます。

もし、印紙税の貼付けを忘れてしまうとペナルティとして過怠税が課税されるので気をつけましょう。

抵当権抹消費用

抵当権抹消費用とは、マンション売却で住宅ローンの残債を完済する場合、マンションに設定されている抵当権を抹消するために必要な費用です。

一般的に司法書士に依頼し、登録免許税として抵当権1件につき1,000円、司法書士報酬として抵当権1件につき1万円から2万円程度が相場になっています。

住宅ローンを完済していても手続きをしなければ抵当権末梢はできず、抵当権が設定されたマンションは引渡しできないので、売却時には必ず抵当権を抹消しましょう。

住宅ローン一括返済費用

マンションの売却資金で住宅ローンを一括返済する場合、借り入れしている金融機関に支払う手数料が必要です。

手数料は0円から55,000円と金融機関によって異なるため、売却前には確認しておくようにしましょう。

売却後の確定申告

確定申告とは1月1日から12月31日までの所得額とその所得額に対する所得税額を計算し、税務署に納税する手続きのことです。

マンション売却によって得たお金は不動産売却による「譲渡所得」として扱われるために、確定申告して譲渡所得税を納税しなければなりません。

もし、納税義務があるにも関わらず確定申告しなければ、無申告加算税や延滞税が課税されます。

詳しい金額の計算は専門家である税理士に相談するべきですが、ここではどのようにして譲渡所得税を算出するか解説します。

マンション売却による譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税を計算するためには、譲渡所得を計算する必要があり、以下の計算方法で算出します。

譲渡所得=売却金額-(取得費用-減価償却費)-譲渡費用

売却金額とはマンションの売却価格を当てはめ、譲渡費用は売却に際して必要になった諸経費を当てはめます。取得費用とはマンションの購入時にかかった費用のことです。

マンション購入費用は物件価格に加え、購入時に必要になった登記費用など諸経費も含まれます。住宅ローンの借り入れにかかった費用は含まれないので注意しましょう。

購入費用について詳しくは国税庁ホームページ「取得費となるもの」をご確認ください。

取得費を計算したら、取得費から減価償却費を差し引きます。減価償却費とは、経年劣化で減少した建物の価値のことで、減価償却費について詳しくは国税庁ホームページ「減価償却費の計算について」をご確認ください。

つまり、取得費から減価償却費を差し引くことで、売却時点におけるマンションの資産価値を算出する目的があるのです。

そして、売却金額からマンションの資産価値、諸経費を差し引いて物件を売却して所得が出たのかどうかを計算します。譲渡所得額の計算ができたら、以下の税率を掛けて所得税額を計算します。

短期譲渡所得
(マンションの所有期間が5年以下)
39.63%
(内訳:所得税30.63%、住民税9%)
長期譲渡所得
(マンションの所有期間が5年超)
20.315%
(内訳:所得税15.315%、住民税5%)

節税につながる?覚えておきたい特例について

マンションを売却した際に一定の条件を満たせば利用できる以下の特例があります。

たとえば「3000万円特別控除の特例」では条件を満たすことで譲渡所得から3000万円差し引くことができ、大きな節税につながるのです。

また、譲渡所得ではなく譲渡損失を出してしまった場合も利用できる特例があります。

これらの条件を満たすことで、その他の所得と損益通算(相殺)して所得税を節税できるようになります。

さらに、1度の損益通算で損失を相殺しきれなければ翌年以降にも繰り越すことが可能です。

そのため、マンション売却によって譲渡損失が出た場合は基本的に確定申告の必要はありませんが、節税のためにも確定申告することをおすすめします。

マンション売却のまとめ

マンション売却を検討する際に不動産会社がどこがいいのか、不動産会社の選び方について解説しました。

不動産会社を選ぶ際には、まず「仲介」と「買取」の違いを理解したうえで、不動産売買を得意としていて、物件エリアに強く、実績のある不動産会社を選びましょう。

大手不動産会社と地域密着の中小不動産会社を比較検討し、自分の考え方に合っている不動産会社を選ぶこともポイントです。

マンション売却の流れでは、不動産会社に任せることで売却はできますが、それ以上に相場確認や販売期限・売却価格を検討など事前準備をして、不動産会社とのやり取りに備えます。

もちろん、物件や自分の考え方に合った媒介契約を選択することも重要です。

マンション売却期間は短くても3か月以上と長期間の取り組みになるので、担当者との相性も重視しましょう。販売活動をする際には室内の片付けや断捨離を進め、人を迎え入れる準備をすることで内覧者に対しての印象も良くなります。
また、マンション売却に際して手数料や諸費用がいくらかかるのかを確認することも重要です。そして、売却後に計算して譲渡所得が発生するならば、確定申告する必要があります。

マンション販売、用地仕入れ、大手ハウスメーカー営業、不動産仲介と都合20年、延べ600件以上の不動産売買・建築請負に携わる。現在は東京の多摩地区で任意売却相談員・不動産ADR調停人・不動産コンサルタントとして、住宅ローン問題、投資不動産トラブル、建築トラブル、不動産相続など各種トラブルの相談・問題解決に取り組む。